自分が勃起不全(ED)ではないか?と感じても、実際に病院へ行って医師に自分の状況を説明するのは照れくさいものです。
セックスは後ろめたいものという価値観が刷り込まれているのは、日本の社会の悪い面です。
ED治療が未だに保険適用外なのも、セックスに対するネガティブなイメージが影響していることは否定できません。
そんな状況ですが、EDの心配があるなら積極的に病院へ行きましょう。
それで勇気を出して病院へ行き、やはり自分はEDであると診断を受けたとします。
その場合、EDに対してどのような治療を行うことが可能なのでしょう。
目次
まずは要因となる病気などの解決
EDという病気は自然に起こるのではなく、そこに至るいくつかの要因や危険因子となるものがあります。
ED自体を治療するよりまず大事なのは、EDを引き起こすに至った要因を解決することです。
生活習慣の見直し
たとえばEDを悪化させかねない喫煙の習慣があるのなら禁煙が必要でしょうし、心因性ならカウンセリングやパートナーの理解が必要でしょう。運動不足なら適度な運動をするのもいいでしょう。
男性更年期障害があるのならテストステロンを
更年期障害は女性だけにあるものではなく、男性でもテストステロンが減ってくることで更年期障害が起こります。その結果としてEDが起こっていることも珍しくありません。
男性更年期障害(医療界ではLOH症候群:性腺機能低下症候群と呼ばれることが増えている)によって起こっているEDであれば、まずテストステロン補充療法が行われるべきでしょう。ED治療をしなくてもEDが改善するかもしれません。
動脈硬化を起こす生活習慣病の治療
もし、EDの陰に高血圧や糖尿病などの他の疾病が存在するならば、まずそれらの治療が必要になります。
アメリカのある調査では、ED以外は健康であるという人を対象に調べたところ、高血圧が4割の人に、高コレステロールが4割の人に、糖尿病が2割の人に見つかったと報告されています。(くわしくはEDは生活習慣病の症状の1つ?)
EDに対する治療
心のケアや隠れた要因を改善しても依然EDが認められる、あるいはもともとED以外に問題がない場合は、EDに対する直接的な治療をすることになるでしょう。
ここでは病院において処方される薬物や手術、あるいは個人で行える方法について取り上げます。
PDE5阻害薬
現在のED治療における主流でバイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)のことです。
バイアグラはED治療に革命を起こした薬で、1999年にバイアグラが日本で発売されて以後、次世代としてレビトラ、シアリスが開発されてきました。
これらのPDE5阻害薬の使用でED患者の7~8割に改善が認められます。
バイアグラが危険な薬だというレッテルが貼られた経緯
不幸なことに初期の頃にバイアグラ服用後に死亡した事故が報道されたために、バイアグラは怖い薬だというイメージがついてしまいました。(→バイアグラは危険な薬だという誤解)
マスコミはセンセーショナルに取り上げただけで事故の状況を詳しく報道しませんでしたが、当該の事故は亡くなった方がバイアグラと併用してはいけないニトログリセリンを服用していたがために起こってしまった悲劇でした。
PDE5阻害薬には副作用としては頭痛、ほてり、動悸などがありますが一過性のものです。
ただし、非常に稀ですが持続勃起症が起こることがあります。
禁忌さえ守れば、本来、PDE5阻害薬は安全な薬に分類されます。
その安全性は肺高血圧症の治療にも使われていて、長期投与が行われていることからもわかります。
強力なED改善作用のあるPDE5阻害薬ですが、どのようにしてEDに作用するのでしょう?
PDE5阻害薬の作用機序
性的な刺激は神経を介してペニスの血管へと伝わり、多量のNO(一酸化窒素)を放出させます
血管内皮から放出されたNOが海綿体の平滑筋に働く時に、細胞内にcGMP(サイクリックGMP)が生成されます
このcGMPが平滑筋を弛緩させることで血管が拡張し、勃起が成立します。(→くわしくは勃起のメカニズムへ)
PDE5(ホスホジエステラーゼ)はこのcGMPを分解する酵素でせっかっく生成されたcGMPを壊してしまうのです。
PDE5阻害薬はこのPDE5の働きを邪魔してcGMPを保つことで勃起を改善する作用をもたらします。
陰茎海綿体自己注射
PDE5阻害薬が効かなかったり、他の方法ができない場合に選択される治療です。
陰茎海綿体に血管拡張薬のプロスタグランジンE1を自分で注射します。
有効率は7~8割と高く、副作用は注射痛以外ほぼありません。まれに持続勃起症が起こることがあります。
現在、日本では認可されていませんが、自主研究の名目で実施できる病院はいくつかあります。
陰茎プロステーシス移植手術
他のED治療がまったく効かなかったり、実施できない場合に行う方法です。
手術により勃起を維持するための人工物を埋没させるわけですから、後戻りはできません。あくまでも最終的な手段として考えて下さい。
しかし、その有効性は極めて高く、9割以上の方がその結果に満足しています。
陰圧式勃起補助具
PDE5阻害薬が効かなかったり、服用できない、あるいは服用したくない場合に選択できる方法です。
ペニスをシリンダー内に入れてポンプで陰圧をかけることで、強制的に勃起状態にします。根本にリングをはめて血液が逃げないようにして勃起を持続させます。
副作用はほとんどなく、リハビリ的な作用で治療効果も期待できます。
欠点はベッドイン時の雰囲気を壊してしまうことと、勃起時または射精時の違和感、ペニス表面の冷感(パートナーの感覚)があります。
誰でも医師の処方なしに購入することができます。
勃起不全体外衝撃波治療
以前より尿管結石の治療に使われていたESWL(体外衝撃波結石破砕術)をEDの治療に応用した新しい方法です。
6週間の治療により、PDE5阻害薬が効かなかった患者の7割が性交可能になり、PDE5阻害薬で性交可能であった患者の半数は、PDE5阻害薬が不要になったという驚くべき結果が出ています。
まだこの治療を受けられる病院は限られますが、新しいED治療法として有望視されています。
まとめ
ED治療というと、バイアグラの服用くらいしか思い浮かばない人も多いと思いますが、治療方法はそれだけではありません。
上述のように、バイアグラが効かない人や、使用できない人、飲みたくない人でも利用可能な治療方法が他にもあります。
バイアグラがダメだからと言って諦めるのではなく、病院へ行って自分に合った治療法を探してみませんか?
男を取り戻すことができれば、その後の生活が一変することうけあいです。