鹿茸の原料となるマンシュウジカ

鹿茸とは鹿の生え変わったばかりの角である幼角を用いた動物性生薬です。

古代中国の漢の頃から、滋養強壮や不老の薬として広く使われてきました。

現代でも、鹿茸に対する強精作用の期待は厚く、ありとあらゆる滋養強壮剤や精力剤に配合されているので、成分表に鹿茸の文字を見たことがある人も多いでしょう。

この記事では精力剤の大御所ともいえる鹿茸についてまとめてみました。

鹿茸とは?

古代中国

中国古来より鹿は精力絶倫の象徴として知られていて、『抱朴子』(晋の時代の道士、葛洪の著書)には「雄鹿一匹はよく牝鹿数百匹と遊ぶ」と書かれるほどで、男にとっては羨望の存在だったのです。

また、牡鹿の角は毎年生え変わり、その成長のスピードがすさまじく早いことや、生えてきた角(幼角)が茄子のような形で男根をほうふつとさせることから、その角を服用することで強壮効果や強精効果があると信じられていて、鹿茸という名で動物性生薬として古くから利用されてきました。

もっとも古い本草学(中国の医薬の学問)の本『神農本草経』に書かれているほど歴史の長い生薬で当時は中国全土に原料となる鹿が棲息していたために、一般にも広く利用されていたと考えられています。

鹿茸、味は甘、温。漏下悪血、寒熱驚癇を治す。気を益し、志を強くし、歯を生じて、老いず。角は、治悪瘡癰腫を治す。邪悪気、陰中に在る留血を逐う

ここで言う「陰中」とは生殖器のことで、「悪血」と「留血」は瘀血:おけつ(血液の流れが悪くなった糖尿病や高脂血症、動脈硬化などの生活習慣病と関連した状態)のことです。

つまり、インポテンツの病態のことを言っています。

日本でも鹿茸の歴史は古く、日本書紀には春に鹿茸を取るための狩りをしていたと思われる記述があります。

現在では、入手が難しくなり、原料の一部として少量入っている精力剤はともかく、鹿茸を主成分として作られた精力剤や鹿茸の現物などはかなり高価なものになっています。

鹿茸の定義や成分など

生え変わったばかりの角、鹿茸

鹿茸に使われるのは中国やロシアから輸入されるマンシュウジカ(別名: 梅花鹿、花鹿、アカシカ、ニホンジカ 学名: C. nippon )とマンシュウアカシカ(別名:馬鹿、アカシカ、アジアシカ 学名:C. elaphus )の2種で、生後3年経ってから春先に角が落ちた後、生えてきた若い幼角(袋角)を用います。

最近はニュジーランド産やアラスカ産の鹿茸もあるようですが、品種が違うため厳密には鹿茸と言えないかもしれません。

まだ、発育途中の幼角は血液供給が盛んなため、切り落とすとかなりの出血を伴います。

血液を多く含むのですぐに加工することが必要で、熱湯で何度も血を洗い流した後、乾燥させてから生薬として用います。

 

管理人管理人

管理人は牛の角を切るのを見たことがありますが、角の中はけっこう血管が入り込んでいるんです。
角を切ったらピューッと血が吹き出してびっくりしたのを覚えています。
血管だけじゃなく、神経も通っているので痛さのためその牛はしばらく気絶していました。

本来は茄子型の枝分かれしていないものが薬効が高いといわれていますが、ほぼ手に入らず、現実的には枝分かれしたものが使われます。

立派に枝分かれしたものでも表面はびっしり毛に覆われてしっとりしています。
英語でVelvet Antlerと言われるゆえんです。

枝分かれしたものでは先端に行くほどいいものとされ、高値で取引されます。

含まれる成分はタンパク質が重量の33%を占め、炭水化物が約1.7%、脂肪酸が1.91%、他にグリコサミノグリカン、コラーゲン、ヒアルロン酸などです。[1][2][3][4]

ミネラルも多く、カルシウムが約7%、リンが5~7%、[5]カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、および銅などです。[6]

テストステロンなどの性ホルモンも微量に検出されますが、切断時に血液が循環していますので、その血液中の残留物であるとされています。[7]

鹿茸の効能は?

漢方薬

鹿茸はれっきとした第三類医薬品ではっきりと効能が認められています。

Amazonでも手に入る松浦漢方の「鹿茸カプセル」の効能は次のようになっています。

効能・効果

滋養強壮:虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振

主に、疲労回復や病後の滋養強壮剤として売られているようです。

でも、われわれ精力低下に悩むシニア男性の望みはそこではないですね。
大事なのは精力剤として有用なのかどうかということです。

大丈夫、心配ありません。
タケダのサイトに記載された鹿茸の効能が以下です。

強壮、強精、鎮痛などに効果があります。
こんな症状に:めまい、不眠、低血圧症、慢性的な虚損、自律神経失調症、更年期障害、耳鳴り、腰膝の脆弱、インポテンツ、四肢のしびれ感

まさに精力剤としての効能がズラリ。
これだけはっきりと精力増強作用を書ける医薬品もなかなかないのでは?

実際の効能以外に、前述の鹿の角が非常に成長が早いことや、茄子状の幼角がペニスを連想させて心理的に効くプラセボ効果も大きいでしょう。
中医学からすればペニスに似た食べ物はペニスに効く”相似の理論”でも説明されます。

近年はむち打ちにも効果があるという報告もあります。

 

管理人管理人

鹿茸の効能としてよく挙げられるのが腰や膝が衰えた状態によく効くというもの。
精力と勃起力がいくらあっても、腰と膝が衰えていてはセックスの時、いい仕事はできませんもんね。
これは間接的な精力剤の効能といってもいいでしょう。

服用方法と用量

服用には削って粉末にして服用します。

その場合は0.5~3gくらい使いますが、経験的なものではっきりとした薬用量はありません。

上に挙げた「鹿茸カプセル」では1日2回で1日量が3gになります。

また、昔からお酒に漬け込んで飲むことも多いようです。

鹿茸の効能は科学的に証明されているの?

鹿茸の薬理作用

強壮作用や強精作用が認められている鹿茸ですが[8]、その薬理作用はどうなっているのでしょう?
はっきりとした薬理作用は実証されているのでしょうか?

まず精力剤として重要なのは性欲の亢進作用、いわゆる催淫剤として作用があるのかどうかです。

いろいろ探しましたが、近年の研究ではっきりと性欲回復などの直接的な作用を証明した報告は見つかりませんでした。

逆に、性欲に対するプラスの効果は認められなかったという報告が出ています。[9]

ただし、この報告は精力や性欲に問題の無い男性を被験者に選んでいたことと、服用量が1日に1gと少なめだったことから、性機能が低下している40代50代の男性にも効かないとまでは言えないでしょう。

また男性機能の一つの目安である血中テストステロン濃度に関しても研究されていますが、鹿茸を1日に1g摂取してもテストステロンは増えなかったとされています。[9][10]

勃起機能に関しては、こんな報告があります。

鹿茸には血流を良くする効果があるという実験結果がでていて、末梢血管の循環が良くなる効果が期待されます。[11]

このことは鹿茸は勃起機能を向上させる可能性を秘めていると言えるでしょう。

医薬品の効能として認められている強壮効果も少量では効かないようで、1日560mgの用量ではパワーアップの効果がでなかった[12]のに対し、1日2,700mgでは効果が認められたと報告されています。[13]

医薬品の「鹿茸カプセル」のように1日3gくらいは飲まないと効かないようですね。

鹿茸には副作用はあるの?

医薬品として販売されている商品には、特に副作用の問題は記載されていませんが、体力の充実している人や熱のある人は服用しないように指示があります。

漢方に従った処方なので、陰陽に沿った使い方をするのでしょう。
陽の気が足りない人を補う生薬なので、陽に満ちた元気な人は飲んではいけないようです。

漢方によれば胃腸障害やのぼせ感、鼻血などの副作用が出ることがあるようです。

このサイトを訪れる人には元気がありあまっている人はまあいないと思いますので気にする必要はないでしょう。

上の方に分枝していない幼角(袋角)はまず手に入らないと書きましたが、実際に生の鹿茸(分枝したて)を手に入れて食した人がいるようです。

鹿茸を食べた翌日は股間がすごいことになったようです。

実際に試した人の話なので信憑性は高いですね。

機会があれば管理人もぜひ食べてみたいです。

参照

1. Wu F, et al Deer antler base as a traditional Chinese medicine: A review of its traditional uses, chemistry and pharmacology . J Ethnopharmacol. (2013)

2. Studies on the Purification and Activities of Polypeptide from Sika Antler Plate

3. Chemical composition of antlers from wapiti (Cervus elaphus)

4. Newbrey JW, Banks WJ Ultrastructural changes associated with the mineralization of deer antler cartilage . Am J Anat. (1983)

5. A Systematic Comparative Study of Main Chemical Composition of Northeast Sika Deer (Cervus Nippon Hortulorum) Velvet

6. Study on the purification and activity of antler plate protein

7. Bubenik GA, et al Testosterone and estradiol concentrations in serum, velvet skin, and growing antler bone of male white-tailed deer . J Exp Zool A Comp Exp Biol. (2005)

8. 久保 道徳 , 周防 俊明 , 松田 秀秋  :  漢薬・鹿茸の生薬学的及び薬理学的研究(第2報) : 本草学的考証と薬効薬理を指標とする鹿茸の品質評価.  Journal of traditional medicines.   14(3), 227-236, 1997

9. Conaglen HM, Suttie JM, Conaglen JV Effect of deer velvet on sexual function in men and their partners: a double-blind, placebo-controlled study . Arch Sex Behav. (2003)

10.   Sleivert G, et al The effects of deer antler velvet extract or powder supplementation on aerobic power, erythropoiesis, and muscular strength and endurance characteristics . Int J Sport Nutr Exerc Metab. (2003)

11. 久保 道徳 , 周防 俊明 , 浅野 年紀 , 松田 秀秋 : 漢薬・鹿茸の生薬学的及び薬理学的研究(第1報) : 血液レオロジーに及ぼす花鹿茸及び馬鹿茸のエタノール抽出エキスの影響. 生薬學雜誌, 50(2), 109-113, 1996

12. Syrotuik DG, et al Effect of elk velvet antler supplementation on the hormonal response to acute and chronic exercise in male and female rowers . Int J Sport Nutr Exerc Metab. (2005)

13.  The effects of New Zealand deer antler velvet supplementation on body composition, strength, and maximal aerobic and anaerobic performance