
ピクノジェノールは先に女性特有の症状(月経困難症、子宮内膜症、生理痛など)に効果があるとして認知されて普及していました。
近年、小林製薬がピクノジェノールを配合した精力剤を販売してから、男性の悩み(ED、精力低下、性欲減退など)を改善するハーブとして俄然、注目されています。
管理人はピクノジェノールについては名前を聞いたことがあるくらいで全然知りませんでした。
今回は、このピクノジェノールについて勉強してみたいと思います。
目次
ピクノジェノールとは?

ピクノジェノールという名はハーブの名前ではなく、松の樹皮から抽出されたサプリメントの商標名です。ハーブ名でいえばパインバーク(pine bark:松の樹皮)ということになります。
でも、ピクノジェノールの方が知名度があり、さまざまなサプリメントの原料としてピクノジェノールという名で通用しています。
松は世界中に生えていますが、どれでもいいというわけではありません。
ピクノジェノールに使用されるのは、フランス南西部のボルドー地方からピレネー山脈にかけてビスケー湾に面する海岸に生育するマツ属マツ科のフランス海岸松(フランスカイガンショウ、学名:Pinus pinaster sp. Atlantica)に限られます。
日本のアカマツに比べても赤い樹皮が特徴的で、樹高は20~35m、太さ1.2mほどに成長します。
ピクノジェノールはこのフランス海岸松の樹皮を水抽出したもので、60%以上を占めるプロアントシアニジン(プロシアニジン)とその他多種類のフラボノイドを含む生体フラボノイド複合体です。
非常に優れた抗酸化作用を持ち、生活習慣病の改善や女性特有の症状を緩和するサプリメントの成分として、世界中で広く使用されています。
ピクノジェノールの成分は?
ここではピクノジェノールに含まれる成分についてくわしく見てみましょう。
- プロシアニジン化合物:65~75%を占める、カテキンやエピカテキンがいくつか結合したもの
- カフェ酸:0.2%
- カテキン:1.5%
- フェルラ酸:0.3%
- タキシホリン:1.4%
ピクノジェノールの作用は、服用後、結腸へ達したこれらのポリフェノールが、腸内細菌に利用されて生成された物質によって起こります。
つまり厳密には、ピクノジェノールを服用した際には薬効成分は含まれていなくて、腸内で生成された成分によってさまざまな薬理作用をもたらすということです。[1,2,3]
ピクノジェノールの薬理作用は?
ピクノジェノールには抗酸化作用を始め、以下のような、さまざまな薬理作用があります。[4]
- 強力な抗酸化作用
- 抗炎症作用
- 末梢血管拡張作用
- 血小板凝集抑制
- 末梢血管抵抗減弱作用
- 結合組織の補強作用
- ビタミンCの生体内利用に対する再活性化
この他に、先述の通り、女性特有の月経困難症や子宮内膜症に対しても有効であることが確認されています。[5]
男性機能改善につながる研究報告はあるの?
ピクノジェノールにはさまざまな効果・効能が認められていますが、ここでは男性機能改善につながりそうな研究報告をピックアップしてみました。
ピクノジェノールは持久力を向上させる
精力イコール持久力というわけではないですが、持久力がないと中折れにつながりますし、いわゆる絶倫の人は持久力があるのは間違いないでしょう。
持久力を付けることで男性機能が向上するのは疑う余地のないところです。
カリフォルニア州立大学の研究で、アマチュアのスポーツ選手にピクノジェノールとプラセボ投与の二重盲検を行なったところ、トレッドミルの持久力に有意な向上が認められました。[6]
中高年になると高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなります。これらの生活習慣病の結果起こってくるのが動脈硬化です。
動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞などの重大の疾病の原因になりますが、それ以前に初期の段階で現れるのがED(勃起不全)なのです。
ピクノジェノールはこれらの疾病や動脈硬化に対して効果があるのでしょうか?
ピクノジェノールには血糖値を下げる効果がある
Ⅱ型糖尿病の被験者に投薬なしで3週間ごとに50mg、100mg、200mgを1日あたり服用してもらったところ、空腹時、食後ともに用量に応じて有意に血糖値が下がりました。[7]

また、抗糖尿病薬とピクノジェノール100mg/日を併用したところ、プラセボ群に比べて有意に血糖値が下がりました。[8]

ピクノジェノールには肥満を防ぐ効果がある
マウスでの実験で、ピクノジェノールを混ぜたエサを与えたところ、食事量の減少がないにも関わらず体重の減少が認められました。[9]
また、細胞レベルの研究でも、ピクノジェノールには脂肪を分解する作用があることが報告されています。[10]
ピクノジェノールは血管内皮を修復し血圧を正常化する
ピクノジェノールは血管内皮に働きかけて、一酸化窒素(NO)合成酵素が効率的にNOを産生するのを助けます。[11]
その結果として、動脈が拡張し血圧を下げる作用があります。二重盲検の研究でプラセボ群と比較して有意に血圧を下げる作用が認められています。[12]
ピクノジェノールをアルギニンと併用すると勃起力が改善する
上記のような作用のおかげか、ピクノジェノールにはEDを改善する作用が認められました。
EDの人、40人に最初の1ヶ月間はL-アルギニン1.7g単独、2ヶ月目はピクノジェノール40mg併用、3ヶ月目はピクノジェノール120mg併用してもらいました。
アルギニン単独の時は5%の人に自然な勃起が起こりました。ピクノジェノール40mgを併用した2ヶ月目には80%の人に勃起が起こり、120mgの3ヶ月目には92.5%の人に勃起が起こるようになりました。[13]

この結果はすごいですね。
アルギニンと併用なので、ピクノジェノールだけの効果ではないですが、ピクノジェノールを併用してからの勃起率が圧倒的です。
これは小林製薬のエディケアの配合で、米国ではPRELOXとして販売されていて米国特許を取得しています。
ピクノジェノールの用量・用法は?
長期に服用する場合に効果があるとされているのは1日に40~60mgです。
しかし、標準的な服用量は100~200mgになっています。
服用は1日量を2回に分けて朝食と夕食時に、あるいは1日1回で服用する場合は朝食時に飲みます。
ピクノジェノールの副作用は?
ピクノジェノールはEDに対する効果で特許を取っていると言っても、分類で言えば健康食品です。
基本的に副作用が心配されるような報告はありません。安心して服用できます。
ただし、松に対するアレルギーのある人や、妊婦、授乳中、子どもに関しては不明な部分が多いので控えるほうがいいでしょう。
まとめ
ピクノジェノールはアルギニンとの併用に限りますが、かなりはっきりとしたEDへの効果が認められています。
単独で使用しても、強い抗酸化作用により男性機能にプラスの効果が十分にあるので、精力剤として利用するのに十分なポテンシャルを秘めているのは間違いなさそうです。
参照
1. Uhlenhut K, Högger P Facilitated cellular uptake and suppression of inducible nitric oxide synthase by a metabolite of maritime pine bark extract (Pycnogenol) . Free Radic Biol Med. (2012)
2. Düweler KG, Rohdewald P Urinary metabolites of French maritime pine bark extract in humans . Pharmazie. (2000)
3. Grimm T, Schäfer A, Högger P Antioxidant activity and inhibition of matrix metalloproteinases by metabolites of maritime pine bark extract (pycnogenol) . Free Radic Biol Med. (2004)
4. Rohdewald P. French maritime pine bark extract (Pycnogenol®), a versatile herbal supplement. Clin Pharmacol Ther 2002; 40: 158-168.
5. Kohama T, Herai K. Inoue M. Effect of French maritime pine bark extract on endometriosis as compared with leuprorelin acetate. J Reprod Med 2007; 52(8): 703-708.
6. Pavlovic P. Improved endurance by use of antioxidants. Eur Bull Drug Res 7(2): 26-29, 1999.
7. Liu X et al. French maritime pine bark extract Pycnogenol ® dose-dependently lowers glucose in type II diabetes patients. Diabetes Care 27: 839, 2004.
8. Liu X et al. Antidiabetic Effect of Pycnogenol ® French Maritime Pine Bark Extract in patients with diabetes type II. Life Sciences, 75: 2505-2513, 2004.
9. Packer L, Rimbach G, Virgili F Antioxidant activity and biologic properties of a procyanidin-rich extract from pine (Pinus maritima) bark, pycnogenol . Free Radic Biol Med. (1999)
10. Mochizuki M, Hasegawa N Pycnogenol stimulates lipolysis in 3t3-L1 cells via stimulation of beta-receptor mediated activity . Phytother Res. (2004)
11. Fitzpatrick DF, Bing B, Rohdewald P. Endothelium-dependent vascular effects of Pycnogenol ® . J Cardiovas Pharmacol 32: 509-515, 1998.
12. Hosseini S, Lee J, Sepulveda RT, Fagan T, et al. A Randomized, double blind, placebo controlled, prospective, 16 week crossover
study to determine the role of Pycnogenol ® in modifying blood pressure in mildly hypertensive patients. Nutr Res 21(9): 67-76, 2001.
13. Stanislavov R, Nikolova V, Rohdewald P Improvement of erectile function with Prelox: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial . Int J Impot Res. (2008)