牛黄が取れる牛

牛に黄色いと書いて”牛黄”は「ごおう」と読みます。

漢方薬としてもとてもメジャーな生薬なので、「ごおう」という音の響きや”牛黄”という文字を一度は耳にしたり目にしたりしたことがあると思います。

鎮痛や解熱、強心作用や利胆作用など、さまざまな薬効を持つ牛黄は日本薬局方にも収載されたお墨付きの生薬ですが、牛黄の効能にはない精力増強や性欲減退に悩む男性のための精力剤にもよく配合されています。

この記事では牛黄の正体とその効能、そしてなぜ精力剤に使用されているのかについてまとめてみました。

牛黄とは?

牛黄

中国でははるか昔から非常に貴重な生薬として使用されていたようで、今から1,800年ほど前にあたる後漢の頃の「神農本草経」にも収載されています。

当時から鎮痙,鎮静,解熱,解毒あるいは不老長寿を目的に愛用されていたといいます。

外観は上の写真にあるように、丸い石状あるいは角の丸くなったサイコロ状で、色は黄褐色~赤褐色、軽くてもろく砕きやすいのが特徴です。
割ると木の年輪のように模様があります。

味は最初は苦く、その後甘みを感じるといいます。

牛黄の正体は牛の胆のうできた胆石で、ほとんどの牛は持っていません。
千頭に1頭の割合でしか採取できない貴重な生薬なので、その価値は貴金属の”金”と同等であるといわれます。

そのため需要に供給が追いつかず、中国では体外培育牛黄(CBS)という牛の胆汁と成分となる原料(ビリルビン、各種コール酸類,硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、水など)から人工的に製造されたものが出回っています。

CBSは偽薬というわけではなく、中国政府が牛黄と同等の効能があると認めて中国の局方にも収載されています。

CBSは牛黄の1/2~1/4の価格なので、牛黄と混ぜてかさ増しした上で牛黄を名乗ったものが流通したり、CBSを牛黄と偽った偽薬も出回っているといいます。

 

管理人管理人

CBSは中国政府のお墨付きがあるといっても、ちょっと不安ですね。
日本薬局方は自然の牛黄のみを認めているため、CBSは医薬品として使用することができません。
なので、医薬品の精力剤なら正真正銘の牛黄なので安心して服用できますよ。

牛黄の効能は多種多様

一般医薬品

日本では、牛黄の効能は解熱作用、鎮痙作用(腸の痙攣を抑え腹痛を緩和する)、鎮静作用、強心作用などのほか、血圧を下げたり、炎症を抑えたり、利胆作用(肝臓の働きを助ける)や抗血管内凝固作用(血栓をできにくくする)などが認められています。

牛黄を単独で用いるよりは、一般医薬品に配合される成分の1つとして使われることが多く、風邪薬や滋養強壮剤、強心剤など約700品目に配合されています。

これは全一般医薬品の6%にあたり、いかに牛黄が重宝されているかがうかがい知れます。

牛黄単独での効能の研究は乏しく、昭和の初期~中期に鎮痙作用[1][2]、鎮静作用[1]、赤血球新生促進作用[3]、解熱・強心作用[4]、血圧降下作用[5]などが報告されているくらいです。

先に述べたように、牛黄は単独よりも他の成分と配合されて用いられることが多く、その代表として、動物性生薬の牛黄と植物性生薬の人参からなる滋養強壮薬として有名な”霊黄参”は、抗酸化作用[6]、肝臓保護作用[6]、抗ストレス作用[7]、免疫調節作用[8]などが報告されています。

中国医学で「於血(おけつ:正しくはやまいだれに於)」という状態があり、これは血液の流れが滞っている状態で、西洋医学でいう糖尿病、高脂血症や動脈硬化などと関係[9]しています。
霊黄参はこの於血での血液の流れを改善する作用がある可能性も報告されています[10]

牛黄が体にいいのはわかったけどムスコはビンビンになるのか?

漢方医学

直接、牛黄が精力回復や性欲亢進、勃起不全に効果があるということを証明した研究はありません。

でも、昔から先人たちは、勃起力を高める効果があるとずっと牛黄を用いてきました。
もし、効果がないのであれば、これほどまで長い間珍重されるようなことはなかったはずです。

昔の人たちも、「これは!?」という効果を感じてきたからこそ、ここまで支持されてきたのでしょう。

科学的に考えても、牛黄の多くの薬理作用から滋養強壮に効くのは日本政府のお墨付きで間違いありません。
体を健康にしてスタミナを回復させる面から、精力アップに効果があると考えるのも自然な流れでしょう。

牛黄が入っているだけで滋養強壮に効くというアピールになりますから、多くの精力剤に牛黄が配合されているのも納得です。

少し飛躍し過ぎかもしれませんが、牛黄が精力剤としてすぐれているのは、於血を改善することにも関係してくるのかもしれません。

上に書いたように於血は生活習慣病の糖尿病や高脂血症、その元となる動脈硬化に関係しています。
これらはこちらの記事で書いたようにEDの原因となりうる病気です。

牛黄が血の巡りを良くして、於血を改善することはEDの予防や改善にもつながると言えるのではないでしょうか。

このことが長きに渡って、牛黄が男性機能を取り戻す妙薬として支持されてきた理由なのかもしれません。

参照

1. 杉本 :日本薬物学雑誌 ,18 , 40 , 1934 .

2.   木村正康,吉崎正雄,平井嗣郎,森田直賢,志甫伝逸 : 薬学雑誌 , 86, 366+372, 1966.

3.   杉本 :日本薬物学雑誌 ,21 , 23 , 40 , 1935 .

4.   羽野, 畏谷川,藤登,後藤 : 日本薬理学雑誌 , 40 , 43 ,1944.

5.   岩城,氷熊,  亀本,橋 場,大 橋,吉 倉 : 日本薬理学雑誌 , 60 , 529, 1964 .

6.   森下信一,  齋藤 隆,  庄司政満,  田中 陽,  佐伯久美,  伊藤千尋,  日薬理誌,  93, 261-270, 1989.

7.   森下信一,  齋藤 隆,  庄司政満,  田中 陽,  日薬理誌,  91, 129-140, 1988.

8.   Morishita S., Shouji M., Oguni Y., Hirai Y., Sugimo C., Ito C., Phytotherapy Res., 7, 179-184, 1993.

9.   Ross R., Nature (London), 362, 801-809, 1993

10.  清水康晴,  鈴木岳洋,  織田賢二,  森下信一,  薬学雑誌,  119, 731-741, 1999.